ある日、市報のある記事に目が留まった。
アルコール・ギャンブル・薬物・ゲーム・・・etc…
依存症の事でお困りのご家族へ
~依存症家族教室~
個別相談もできます。
精神保健センター
何度も記事を読み、この【精神保健センター】が依存症などの相談窓口になってくれることが分かった。
『はい。○○県精神保健センターです。』
電話には若くて感じのいい女性が出た。
まず自分の夫が性依存症である可能性が高いことを話した。
そしてその場合はどうしたらいいのか、病院に行くべきなのか、など聞いてみた。
『こちらのセンターでは性依存症の相談は扱ったことは無いのですが、
アルコールやギャンブル依存症などと根っこは同じなんです。
なので同じように相談に乗ることができます。
匿名で大丈夫ですので家族教室にもぜひいらっしゃって下さい。』
『かかる病院は精神科になります。
依存症の治療を主に行なっている病院は、○○病院、○○病院、○○病院…。
それと、お住まいの場所からは少し遠いですが…
○○市のM病院は依存症の治療ではとても有名ですね…。』
センターの女性はそのほかいろいろと私の心配などもしてくれ、優しく丁寧に対応してくれた。
「家族教室に参加する場合は連絡します」と言って、お礼をして電話を切った。
その話を夫へ報告した。
夫は精神科へ行くことをすんなりと受け入れた。自分でもどうなのか知りたいと言った。
そしてM病院に行くことに決めた。
距離的にも知り合いに合うリスクが少ない。(夫は顔が広い)
『夫婦の問題だから』と夫から同行するように言われていたため、私も一緒にM病院へ。
家からは2時間かかる。
車の中ではお互い何も話さず、沈黙が続いた・・・。
そして病院についた・・・。
初めに問診票の記入や、何か色々と書いてあるチェックリストの記入、精神保健福祉士さんとの面談などがあった。
そして先生の診察。。。
2人で診察室に入った。
先生は小堺一機さんを細くしたような見た目で、カラッとした話しやすい先生だった。
私たち夫婦の家族構成や、それぞれの職業などを聞いて先生が家系図を書いていた。
そして夫はまず受診するまでの経緯を話したあと、
昔から現在までの性に対する執着の強さを、自分でも「異常だと思う」と話した。
夫『で・・・自分は性依存症なんでしょうか?』
先生、
『はい。そうですね。』
あっさり。
そして先生が『性依存症によって困っていることはなんですか?』
と質問すると夫は
『えーーー・・・と・・・
今の状況はもちろん困っている状況だとは思うんですけど・・・
性欲が強いってことは、男の本能や強さと直結すると思うんで・・・
悪いことだとは思ってないんですよね・・・。
だから離婚を避けるために治療をする必要があるとは思うんですけど、
依存症だから困っているかと言われると、そうでもないですね・・・。』
と答えた。
正直この【男の価値=男の強さ=性欲の強さ】理論は何度も聞いていてうんざりしていた。
夫の話を聞いて先生は『ほほーーーーっ…。そうですか。』
と・・・意外そうな反応をした。
そして言った。
『ゲスオさん、あなたは・・・すごくラッキーな人です。』
へ・・・?
私たち2人はキョトンとした。
先生は続けた。
『ここに来る依存症の患者さんはもうほとんど、
全てを無くしてから・・・最後にここに来るんです。
お金・・・家・・・家族・・・。
最悪の人は命を無くす。
あなたほど危機感が無いということは、
早い段階でここに来れたという事です。幸運です。
奥さんに感謝してくださいね。』
・・・夫も私も、こんなことを言われるとは思わなかったので驚いた。
事態は最悪なものでしかないと思っていたから・・・・。
先生が何枚か引き出しからチラシを出した。
性依存症の当事者による自助グループの案内の紙だった。
3団体ほどのチラシをくれて、こう言った。
『通院以上に大事なのはこの自助グループに通うことです。
回復の為の12のステップを行います。
グループのみなさん同じように苦しんだ人達ですが、ちゃんと回復しています。
ここに通えば、必ず回復します。
大丈夫。あなたも助ける側になれますよ。』
先生ははっきりと言った。回復する、と…。
夫もこの自助グループに行くことを先生と約束し、病院を出た。
会計では【自立支援医療】の案内の紙を渡してくれた。通院代が1割負担に軽減される。病院側からこれを教えてくれるのは親切だと思う。
病院を出た。
なぜか、心が軽くなっていた。
なにか一筋の光が見えた気がした・・・